会長挨拶
- 第49回日本人工関節学会を開催させていただくにあたって
第49回日本人工関節学会 会長
山本 謙吾
東京医科大学 整形外科学分野
この度、第49回日本人工関節学会を平成31年2月15日(金)と16日(土)の2日間にわたり、東京新宿の京王プラザホテルで開催させていただきます。本学会は、人工関節に関する臨床的ならびに基礎的研究の進歩、発展を図ることを目的として昭和46年(1971年)第1回人工関節研究会として発足し、その後諸先生方のご努力によって発展を遂げ、平成8年(1996年)の第26回からは日本人工関節学会となり、間もなく半世紀を迎えようとしていますが、現在では会員数は3,000名余に到る大規模な学会となりました。東京医科大学といたしまして初めて本学会を開催させていただくことは、大変名誉なことであり、光栄に存じます。ひとえに会員の皆様のおかげと心より感謝いたしております。
人工関節医療は現在では整形外科学において極めて重要な位置を占めており、その手術適応となる疾患対象も先天疾患、外傷、変性疾患、腫瘍等非常に多彩です。従って人工関節を専門として医療を行おうとする医師は極めて広い領域の知識を習得する必要があります。また単に手術手技を習得するのみでなく、対象となる疾患の病態生理を把握し、その特性を理解することが手術適応の判断には不可欠です。さらに使用するインプラントの材質、形状などの特性を十分に理解しないままに行う手術は患者のQOLに多大な障害をもたらす可能性があります。
現在国内において年間十数万件を越す極めて多数の人工関節手術が行われ、その数は年々増加の一途をたどっていますが、その手術適応、手術方法、インプラントの選択、術後のリハビリテーションなどに関して、十分に検討がなされたのか疑問を投げかけたくなるような症例を目にする機会が少なからずあります。新しいコンセプトの手術手技や素材が次々と開発され、学会等で報告され、先を競うように論文化されていきますが、確実にインプラントのlongevityの向上さらには患者のQOLの改善につながったのかどうかの検証がしっかりとなされてきているといえるでしょうか。
このような思いから今回の学会のテーマを「欲速則不達」とさせていただきました。論語の一節に「速やかならんと欲することなかれ。小利を見ることなかれ。速やかならんと欲すれば則ち達せず。小利を見れば則ち大事成らず。」というくだりがあります。
「早く成果を挙げたいと思ってはいけない。目の前の小さな利益を追ってはいけない。成果を急げば達成しない。小利に気を取られれば大事は達成しない。」という解釈になろうかと思います。次々と市場に出回る新規材料を、功を焦るあまり十分な検討をしないままに患者に適応すれば、結果的には多くの不利益が生じてしまう恐れがあるという戒めととらえ、人工関節学の進歩と発展を目指す本学会において、反省を込めて、基本に立ち返り、じっくりと人工関節の適応、材料、手技そしてリハビリテーションまでを学ぶ機会となるような学会とすべく努力いたしたいと考えております。是非多くの皆様のご参加、ご発表を心よりお待ち申し上げます。